ウインナー

帰ろうと職員室を出たら、昇降口でY君と出会う。

「ウィンナーがな。」
「うん、うん。(ウィンナーがどうしたん)」
「賞味期限が7月15日でな。」
「うん。」
「これがな、14日やったやろ。」

Y君は、手提げかばんから紹介用紙を取り出して、指差した。
今週初めの図書委員会で、みんなに渡した用紙だ。
6月の選書会で自分たちが選んだ本を、おすすめ本として全校に紹介するために、貼りだしたり本のオビをつけたりするのだ。
委員会だけでは書ききれないので、14日までの課題としていた。

「そうそう、14日までやったよ。」
「(ウィンナーの賞味期限を)見るたびに、思い出すねん。これの締め切り。一日前やろ。」
「そうなん!」

それで、ウィンナーかぁ。
何の話になるのかと思ったら、ちゃんと着地した。
わかったよ。

「それで、書けてんの?」
「う〜ん、ここまでは書けたけど…」と、細かく話してくれた。

「じゃあ、がんばってね。ばいばい。」
「ばいばい。」

Y君が去っていってしまってから、私の頭の中にウィンナーの袋に表示してある賞味期限の文字が、ぱあっと浮かび上がった。
ひとりで、いつまでも笑ってしまった。
靴をはいて外へ出ても、笑いが止まらなかった。