書くことで 知る

図書の時間について、年度末に感想をとらせてもらう。
読み聞かせで心に残ったものや、自分で読んでみてよかったもの、図書室についての要望や入れてほしい本などについて、率直に書いてもらうようにしている。

今年は異動して1年目なので、特に高学年の感想は見たいような見たくないような、ちょっとこわい気持ちだった。
よそいきの言葉で「ありがとうございました」と書かれてあっても、へこむしな…。
で、1年から6年までのものがかえってきて、じっくり読んだ。
やっぱり、とってよかった。

垣根なく近づいている言葉。よそいきの言葉。もちろんいろいろあるが、日をおきまた読むと、違う顔も見えてくる。
私という人間を、咀嚼しているんだね、いま。
知り合うのに、時間をかけなければ。

そうポジションを決めると、いろんな子どもたちの期待や関心がわあっと飛び込んでくるのだった。


4年生の感想に、何人もが「初雪のふる日」を取り上げていたのにびっくりした。

安房直子偕成社の絵本シリーズは、この「初雪…」をはじめ「雪窓」「うさぎ座の夜」「てんぐのくれためんこ」など、それぞれ個性ある画家によって読み応えのあるものになっている。
前の学校では、動きがあって展開が楽しい「てんぐのくれためんこ」を読んでいた。
3学期に肌寒い日が続く日に、「初雪のふる日」を読んでみようと思い4年生に話してやったのだった。

私が、この作品を初めて読んだ時、石けりの輪を飛んでいくのが止まらなくなってしまうのが、アンデルセンの「赤い靴」を思い出してひたひたとこわくなったのと、やっとうさぎの魔法がとけたときに足が疲れきって一歩も動けなくなっていたのにすごく実感を持った。

その不気味さを、みんなで怖がりながら楽しみたいな…と思ったので、長い文章だったが、少々引っぱって読み進めていった。

感触としては、ぐっと集中した瞬間が何度も波のように訪れたが、ちょっと長かったかなァと思った。

私としては、安房さんの「しっとり系」を一度読んでみたかったので、まあ、こんな日もあっていいや。みんな、聞いてくれてありがとう。
…と思っていたのだが。


★女の子がうさぎのせいでどこかへ行ってしまい、知らない町に来る所がおもしろかった。そして、その町に着いてから近所の人が送ってくれたが、もし、きづかれていなかったらどうなっていたんだろうなぁと思うだけでおそろしかった。

★昔のおばあちゃんの話を思い出して、それをいうと、うさぎはそれを信じたので、すごくあほだなぁと思いました。そこがおもしろかったです。

★少しぞっとするところもあったけど、「よもぎよもぎ、はるのよもぎ!」と言ったしゅんかんパッとうさぎがいなくなり、輪もなくなり、そこが何もないただの町になったので、わたしはビックリしました。


一度聞いただけで、しかも文字を追っているのでないのに、克明に覚えているのに驚く。
何よりも、安房さんの世界をすっぽり感じとってくれているのがうれしかった。
自分の感じたままにもっていってよかった。

そして、それは「書く」という行為がないと、私にははっきり確認出来なかったことなので、思い返して「書く」ことの重みをかみしめたのだった。

この作品は、5年生の教科書に載っているらしい。私の市では違う教科書なので、ないのだが。


(「初雪のふる日」安房直子/作 こみねゆら/絵 偕成社