かけぬけたお姉さまたち

この頃はいろんな出版社が新書を出していて、駅構内の本屋などでつい手にとってしまうものも多い。
中身も、適当にくだけていて読みやすいもの。
でも、いまの社会情勢や話題になっていることを、うまい具合に刺激する。
ちょっと興味あるなあ…どうしようかな。
ふらふらっときて、値段も1000円しないし…なんてお手頃価格も魅力的なのだ。うまい企画だと思う。

この「同期生  りぼんが生んだ漫画家三人が語る45年」(一条ゆかりもりたじゅん/弓月 光・著 集英社新書)もそうだ。
私の世代には懐かしい。
でも、本当は私の世代はこの人たちのあと、陸奥A子・田淵由美子・太刀掛秀子なのだが。しかし姉がいたせいか、私のマンガ体験はきっと早いのだ。
そして語るなら、姉は少女コミック派でその洗礼を受け、妹もすっかり萩尾望都竹宮恵子大島弓子ファンだった。
こんな話、興味のない人には全然興味がないだろうなあ。
でも、懐かしい人には、たまらなく懐かしいだろうなあ。

そんなわけで、ずっと追いかけていたわけではないけれど、この「りぼん」の看板作家だった3人組の語る45年なんて、あなたやっぱり手に取らないわけにはいかないでしょうが。


読み始めたら、あっという間に最後までいってしまった。とても、真摯な内容だった。

1作1作ごとに、生みの苦しみがあり、のたうちまわる彼ら。
アシスタントの役割、よい編集者に巡り合うことの幸運。
思った以上に、漫画家とは共同作業しには出来ない「チーム」であり、チームをうまく動かせないと漫画家としても長続きしないことを、読みながら痛感した。
そういう意味では、しっかりしたパートナーや助手がいる人は別だけれど、漫画家自身が現実感覚を持ってないとやっていけない。自分の作品を客観的に評価出来ているかが不可欠なんだと思った。

そういう意味では、この3人は優秀な編集者との出会いや時代の「運」をうまく味方につけ、自分の持てる力をふりしぼって若い日々を精進していく。

一条ゆかりの「デザイナー」は、私も当時夢中で読んだが、彼女が一番描きたかったのは、主人公の亜美ではなく、ライバルの麗華だったのだそうだ。
それは作家の年齢もあるだろうし、少女読者に納得させながら大人の自分がどこに力を入れるか。
モノをつくるって、自分がつくりたい世界を読者に納得させるには、いろんなコマを置いて組み立てていくんだなあ…と、思った。

まあ、仕事はそうかもね。
やりたいことは、必ずしもみんな手ばなしで賛同してくれない。相手を納得させるには、あつい気持ちだけでなく手立てがいる。
そうして階段を上っていくのだ。

また、自立した女性として職業として働き続け、また確立していった一条ゆかりもりたじゅんの姿勢に、憧れと少しばかり挫折感を感じた。
経済的に自立している。


私は、そこが弱いんだなあ…。


年上のけたたましくまた能力もあるお姉ちゃん。
圧倒されます。
このお姉ちゃんたち、やることはやるもんで、主張も激しい。闘うんだなあ。そしてちゃんと努力するんだなあ。

遅咲きの妹は、傷つきやすくいつまでも甘ちゃんなんだなあ…

と、すねてしまうのは、それそのものが依存していて未熟だからなのだが。

でも、渇を入れられたような気もする。
元気も出る本だった。

ところで、知ってました?
弓月 光って、男性なのよ。作品一覧を見ていて、「笑って許して」「新婚は甘くない」好きだった。
当時の小学生は、こんなマンガを見て楽しんでいたのだよ。