時には あたらしい香りを
まんべんなくとはいっても、やはり司書も人間。
その嗜好はやはり書棚にはあらわれる。
そして、各学校の図書の時間で親しんでいる読み聞かせの本も、少しずつ違うのは当たり前なのである。
新しい学校ということは、差し出す本が子どもたちにとってことごこく「初めて!」になることが多い。(私の場合はそう)
なので、春からいままで自分のブックリストから選んでいて、特にこのところ新刊書もチェックしていなかった。
それでまわしていけるってことは、私も引き出しがふえたんだな…とも思う。
だって、10年前はやっぱりもっとあっぷあっぷしていたから。
でも、引き出しがあるからと、これでいいのかい?
とふと思った時、ちょうど子どもの本屋さんにゆっくり居られる機会がめぐってきたのだった。
書棚をじっくり見ると、ああ、楽しいなあ!
図書館にいるのとは、また違う楽しさ。
刺激は、必要なのだとあらためて感じた。
ということで、気になった本たちを。
「ボクのかしこいパンツくん」(乙一/作 長崎訓子/絵 イースト・プレス)
真っ白いブリーフパンツにドキッ。
これ、「ラチとライオン」のおっきい子版のような話だ。
ライオンがパンツになってるというか。
最後にパンツが語るのが、ちょっとじん、とくる。
なかなかやるなあ、乙一さん。
でも、この本はヤングアダルトって気もするなあ。
小学生は、多分パンツに過剰反応して、中身に入ってくのを邪魔されるかもしれない。
まあ、読んでみないとわからないけど。
大人だけで読んでもらうのも、いいかもね。
「のびる のび〜る」(深見春夫/作・絵 教育画劇)
よくある話なんだけど、想像の翼が折れないで最後まで引っぱってくれるところがよい。
絵もていねい。
特別支援学級での読み聞かせも、いいと思うな。
「おさるのパティシエ」(サトシン/作 中谷靖彦/絵 小学館)
おさるだっていろいろキャラがあるんだろうけど、いかにもおさるらしいなと思える調子のよさ。
「おさるだもん!」
このノリが、とても合ってる。
出来たいろんなケーキのネーミングが笑える。
犬をかたどった「ワンブラン」、猫のは「ニャンブラン」。「フルートパフェ」(生クリームにフルートがささってる!)消しゴムの形した「けしチョコ」。
これでわくわくする人は、私と同じですね…。
子どもは大好きで、大人は何がいいの?と思う本かも。
「おにぎりがしま」(やぎたみこ/作・絵 ブロンズ新社)
大好きなやぎさんの新作。
小舟になぜか、おにぎりひとつ。
ピカーンとカミナリがおにぎりに落ちる。
すると、おにぎりがパカンと開き…生まれたのは小さな鬼。
それが、おにぎりおに。
やぎさん、そうくる?
発想が独特で、やはり絵がいいのだ。「もぐてんさん」「おはぎちゃん」「かめだらけおうこく」が好きな人はぜひ。
「ぺろぺろキャンディー」(ルクサナ・カーン/作 ソフィー・ブラッコール/絵 さ・え・ら書房)
兄弟のかかわりのなかで、よくある光景をうまく切り取ってお話にしている。
お姉ちゃんの気持ち、妹の気持ち、お母さんの取った態度…それぞれの立場がちゃんと描かれている。
子どもたちは、お姉ちゃんに気持ちを寄せて読むかな。
どう反応するかな。
お姉ちゃん、すごく切なくて、すごくえらい。
でも、こんな経験をするから人間として深みが出るのだと思う。
パキスタンからカナダに移り住んだために習慣の違いにお母さんが気づかずに起こった出来事から、この絵本は書かれたようだ。そういう意味では、異文化の狭間で悩む移民の問題も入ってるようだが、そんなことは知らなくても兄弟間の普遍的なテーマとして充分伝わると思う。
時には、新しい香りをかぐことも大事。
そして、ゆとりをもつことが元気につながるんだなあ。