はじまりは こわい話で

「2学期最初なので、今日はこわい話からね。」
と言うと、
「え〜、こわいの大好き!」「して、して〜」
と声が響く。

「ど〜ん ち〜ん か〜ん。さて、なんの音でしょう…」

こんな風にして始めた。

この絵本は、「どーんちーんかーん」(武田美穂/作・絵 講談社)。ページを開くと山伏さんが登場。でも、かーわいーい!いつもの武田ワールドの絵だ。
「全然こわくないやん。」と、2年生たち。


ふふふ、これからですよ。


いたずら好きの山伏さんは、いい気持ちでうたた寝しているキツネの耳のそばで、持っていたホラ貝を「ぶおぉ〜〜〜〜〜」と吹きたてたから、キツネはもうびっくり。
あっちへ転び、こっちへよろめき、川にどぼんちょとはまって、それでもよたよた逃げていった。

そして、林をなお歩く山伏さん。
あれ、今日はやけに早く日が暮れるなあ…。今夜は木の上で眠るとしよう。

「木で寝るの?」「落ちひん(ない)やろか…」と、つぶやく子どもたち。

すると、どーんちーんかーん  なむなむなむ…どーんちーんかーん  なむなむなむ…。
鐘とお経の音が聞こえてくる。
お葬式の行列がやってきて、山伏さんの寝ている木の下で止まったのだ。

あれあれ、何かある予感。

だんだん、表情が変わっていく子どもたち。
面白いほど、しーんとなる。

ここからが、こわくなってく。

絵は可愛いけど、結構迫力があり怖がらせてくれる。


最後までいって、「なーんや。」「怖(く)なかったわ。」と、俄然元気になって気勢を上げる子どもたち。
ホッとしたのね。


作者の武田さんは、前に講演会でこの話をされていた。これは、いなかに帰るとおじさんが必ずしてくれた怖い話なんだそうだ。
親戚の子どもたちを集めて臨場感たっぷりに話してくれ、「どーんちーんかーん」と鐘が鳴り、「なむなむなむ…」とお経が流れ、ついに怖いやつが「ばっちりー ばっちりー」と追いかけてくる。
わかっていても、ドキドキして聞き入ってしまうのだそうだ。

もうかなり前のことなのに、武田さんはものすごく楽しそうに語られていた。
そして、実際に読んで下さったのだった。


私はあんまり怖く読めない方だし声音もそう変えないが、子どもたちの表情を見ていたら、それでも充分ドキドキしていて、それを見ているだけでも語り手冥利に尽きるのだった。

図書室で、こんな風に楽しむのもいい。

でも、武田さんのような体験を学校以外の場所で、親戚やお家の人と一緒に出来たら、もっともっといいなあ、と思う。


そのあと、4年生にも読んだら、反応は2年生とほぼ一緒なのだった。

やっぱり、みんな怖がりたいのね。
そして、聞き終わったら「あ〜、怖なかった!」と言いたいのね。