どっしりした魅力

2年生に「やねのうえのもも」(織茂恭子/作・絵 童心社)を読んだ。

表紙は、ぷくっとふくれたももの姿。屋根にのっている。

まるで、保育所にいってた時代の娘の服装みたいだ。

ももの頑固で頑張るところと、日々の誤解はあってもひろく親の愛に包まれているどっしり感がいいなと思い、子どもたちに読んでみようと思ったのだ。


すると、思った以上にお話にひきつけられていた。


ももの気持ちに添って、入り込んでいる。
早合点してももを叱るお父さんに、みんなの口も、とがってくる。
「違うし!」「それは、かんちゃんが言うたのに!」
ももに代わって、代弁しているのがおもしろい。


自分で黙読した時にはそんなに思わなかった「おじいちゃん」の言動が、口に出して読んでみると、くっきり立ってくる。

勘違いして怒鳴りこみにきたおじいちゃんのケンカ口上も、おかしい。その口調に笑いが起こる。
そして、誤解だとわかると、あっさり謝るおじいちゃん。
子どもたちは、おじいちゃんのことを受け入れてるな…と感じた。


お父さんも、もちろんもものことを愛しているのだが、わからずやの大人の代表になってくれているため、少々分は悪い。
繰り返し、誤解するお父さんに思わず私が、「大人って、だめねぇ」と言うと、みんな「あかんわ!」「そうやそうや!」と、自分たちが日ごろ受けている被害?を一斉に言いだしそうになる雰囲気に一変した。


ももの家は、物干し場からはしごで屋根に上がれるようになっている。
私自身もこんな家に住んだことはないし、いまの子どもたちもないだろう。
でも、嫌なことがあったらこんな場所に来ることが出来るなんて、うらやましいな…と思ってしまうのだ。
多分、子どもたちもそうなのだろう。

一件落着して、おじいちゃんも一緒に、ももの一家は物干し場にちゃぶ台を持ってきて、晩御飯をそこで食べる。
夕焼けにつつまれて、みんな幸せそうだ。

もものしっかりした自我が全体を貫き、結局はしっかり子どもをたくましく育てていると思わせる骨太な作品なのである。


一見、大人が懐かしむような昭和な物語のように見えるが、そうではない。
子どもを解放してくれる、いまの子どもたちの心もとらえる物語だと思った。


こうして、読んで確かめて、感触をつかんで。
この繰り返しが必要なのではないか。

古い、新しいの見かけでなく。

新しいようでも、保守的なつまらないものは、実はいっぱいある。