大きくなったね

年度末に向かって、気ぜわしい毎日。
でも、子どもたちと何気ない会話をしたり、読み聞かせしている空気感がすごくいい感じだ。
3月のいまの時期だからこそ、感じる親密感のようなもの。

カウンターの前に陣取って話しているY君。
「なあ、先生は、ずっとこの学校の先生なん?」
「う〜ん、どうやろなあ。ずっとは、無理やなあ。」
「ぼく、先生がええなあ。」
「なんで?」
「おこる先生はいややな。」
「先生の知ってる図書の先生で、そんな人はいないけどな。」


Y君の顔を眺めていたら、1年生の頃のことを思い出した。


「Y君、ゴキブリの本読みたいって言ってたの覚えてる?」
「え〜、そやったかな…」


1年の頃、Y君はゴキブリの本が読みたくて、図書室に来るたび私にせがんでいた。昆虫図鑑には小さくちょろっと出てくる程度で、とてもY君の要望には届かない。
市立図書館に行き、調べてもらうと児童書では当館にはなく、相互利用サービスで他館から取り寄せることにしてもらった。
図書館司書の人がパソコンキーをたたいていて、「ゴキブリは害虫なんですね。」と言う。
害虫とは、人間にとって害があるという意味だ。

取り寄せた数冊を、先に読んでみた私はあらためて「害虫なのかな?」とわからなくなった。
ゴキブリ自体は攻撃的な生き物ではない。
暖かいところを好むので、近年人間の家屋に姿を見せるようになったが、ゴキブリを人間が嫌ってるだけなのだ。

「ゴキブリはわるいムシなの?」と問いかける絵本もあった。
(たしか、古い「かがくのとも」だったと思う)


そして「Y君に教えてもらったよ。」と、1年生の読み聞かせにその本を読んだこともあったなあ。
神妙な顔をして聞いていたあの時の子どもたちも、もう3年生を終わろうとしている。

そのなかで「ドキドキいっぱい!虫のくらし写真館シリーズ」(ポプラ社)のなかの「ゴキブリ」を選び、学校で購入した。当時のY君は、喜んで何回も借りていたっけ。
(このシリーズは写真が大きく載っていて、よくわかるしおすすめだ。ちょっと高いが、堪能出来るシリーズだ。)


「Y君、持って来てみ。緑のマークのところにあるやろ。」
友達が、「なになに」と一緒に見ている。

「ああ、ぼくよう借りてたなあ。このカバンみたいなとこに、たまごがいっぱいあるねん。」
「うわあ!」と気持ち悪そうな友達。
「そやねんなっ!気持ち悪いけど、面白いねんなっ!」と、顔見合わせてうれしそうな私とY君。


こんな会話が、ただ愛しい3月のある日。