いうたら あかん!
夏休みの図書室開放で、地域のおはなし会の方が来て下さった時に「アナンシと五」の語りをやってもらった。
子どもたちは面白かったらしく、後になって「先生、あの話の載っている本はあるの?」と聞いてきたりしていた。
こんな時は、忘れた頃にまた同じ話を聞く機会があった方がいいのだ。
語りをなかなか覚えられずレパートリーの増えない私なのだが、ちょうど今日がいいかなという日が訪れたので、本を片手にだが語ってみた。
アナンシは、悪いことが大好きなとんでもないやつ。
ある日、「五」という名前の魔女が「五と言ったものは、死んでしまえ。息絶えてしまえ。」と、魔法の呪文を唱えているところに遭遇する。
いいこと聞いたと、アナンシはみんなが通る道に、さつまいもを積み上げた山を5つ置いて、道行く者に声かける。
「すみません、私は頭が悪いもんで、さつまいもをいく山置いたか数えられないんですよ。私のかわりに数えてくれませんか。」
気のいい、アヒルは「いいですよ。」
「1、2、3、4、5」
「5」と言ったとたんに、ばったり死んでしまう。
アヒルをぺろりと食べるアナンシ。
次に来たウサギの奥さんも、「1、2、3、4、5」でばったり!
お腹いっぱいになるアナンシ。
聞いてる子どもたちは、「5」までくると表情が変わってくる。口に手をあてる子も。
さあ、お次にやってきたのはピンクの足のはとの奥さん。
「またや…」というつぶやきも、聞こえる。
ところが、このはとの奥さんの数え方は、ちょっと不思議なんだ。
さつまいもの山から山へと、飛び移り数をかぞえる奥さん。
「い〜ち、に〜い、さ〜ん、し〜い、それから私ののってる分。」
「あんたの数え方は、おかしいよ!」
いらいらするアナンシ。
どっと笑う子どもたち。
「あら、ごめんなさいね。」
はとの奥さんは、また数え直すが…。
「ちがう〜!」
お腹かかえて笑っている。
ここは、はとの奥さんをあせらずのんきに語ること。
奥さんは、必死なのだ。
わかっててやってるのとは違うのだ。(これは、私の解釈)
さて、ついに堪忍袋の尾が切れたアナンシ。
「こうやって、数えるんだよ!1、2、3、4、5!」
バタン…!
アナンシの止まらない数え方に、「ああ〜っ!」と声の出るみんな。
「あ〜、おもしろかった」
語リ冥利につきる、とてもよく出来たおはなしなのだった。
その後、本の返却をしていると…返すためにカウンターに並んでる1年生たちが歌うように、「い〜ち、に〜い、さ〜ん、し〜い、それから私ののってる分」と、繰り返していた。
そこが、心に残ったんだね。
そして、「なあ、先生。どうやって言ったらいいかわかったで。」と言う。
「うんうん、どうしたらいい?」
「うんとな、1、2、3、4、ファイブ!」
「なるほど!」
「こんなんもあるで。1、2、3、4、いつつ!」
「へえ、うんうん。」
子どもたちの口からこうやって出たことが、すごくいいなと思った。
このアナンシおはなしは、ジャマイカの民話。
前の学校の子は、ラストでアナンシが「5」といいそうになる直前に、突然ひきつった顔で立ちあがり「あかん、言うたらあかん!」と叫んだっけ。
あれも確か、1年生だったなあ。
有名なおはなしで、オチがはっきりしてわかりやすいので、語る人も多い。