風通しのいい物語

家族四人で話し合う家族会議。
だじゃれ好きのパパが命名した「レッツゴー会議」。
なぜレッツゴーなのかというと、その家族の名前は「空井」さんだからだ。
つまり、レッツゴーとは「そらいけ!」の意味でしょ。
空井家の会議だから…レッツゴー会議というわけ。

そのへんで、くっくっと笑いだすと、もうこの本の世界に入っちゃう。
ゆり椅子が近所を巡る話や、フランス人形のブリジッタ事件(これは、私のツボに入り、大声で笑って読んでいた)おかしいんだ。

新沢としひこさんは、シンガーソングライター。
「世界中のこどもたちが」の歌をつくった人としても知られている。
中川ひろたかさんもそうだけど、子どもごころを描くのが上手いよなあ。

中川さんの「おおきくなるっていうことは」もそうだけど、この「シュンタのぼくんち新聞」も、まぁありそうな題材だし、この手のテーマの話はよくある。
よくあるのだが、息の抜き加減がよいというか、大人も子どもも等身大の姿がちゃんと描けているのだ。だからリアリティがある。
同じテーマが乱立してるとしても、成功してるのは案外少ないので、そこがやるなァと思うのだ。

この物語も、会話の妙に笑えた。


ひとりひとり違っていいじゃない。
パパ、ママ、サワミ、シュンタのそれぞれのこだわり。

この本のいいところは、安易に「わかるよ!」とは言わない。

ママがなんでママと言ってほしいか。
ママには確固たる理由があるけれど、だからって他の人にはぴったりとはしない。
でも、ママがこだわる理由はわかった。
そうやって、ひとりひとりのこだわりを知る。
適度な距離感でつきあう。

そんな空井家の家族のしなやかさが、魅力だ。


ところで、ボードを買ってきて、こんな事件を壁新聞にしたらどんな見出しになるだろうとシュンタは何度も想像するのだが…
結局一度も書いてないよね?

私にはそう読めたのだが、さてどうだろう。


『シュンタの「ぼくんち新聞」』(新沢としひこ/作 保手浜孝/絵 理論社