ブームの気配

「ねえパパのおはなし聞かせて」
「じゃあ、パパがスニーカーだった頃の話をしようか」



「え〜〜〜!!」
この叫びは、聞き手の子どもたち。
スニーカーなんて。
どういうこと?



意外性で心をガッチリつかんでしまう角野栄子の幼年童話「パパのおはなしきかせて」(小学館)は、導入が見事なのだ。



パパスニーカーをはいていたのは、高校生のお兄さん。足も29センチと、大きな靴だったんだよ。
ある日、パパスニーカーはひとりでどこかに行きたくなって、ドアから飛び出し外に飛び出す。



すると、ネズミのお母さんに呼び止められて…。



どうやらもぐらの工事がうるさくて、赤ちゃんたちがしっかり眠れなくて困っているらしい。
つまり、家財道具をパパスニーカーに詰め込んで引越ししたいというわけだ。


オームラトモコさんの絵が、とても楽しい。
そして、こんなにあるのとびっくりするくらいの家財道具!
細かく書き込まれた絵は、子どもたちの関心をひき、話を聞きながらつぶやきがたくさん出てくる。



ただ難題がひとつあった。
6匹の赤ちゃんをどうやって運ぶか、というもの。


スニーカーのなかは、荷物で満杯。

「さあ、どうする?」


ほんとは、次のページに続きのストーリーがあるのだけれど、ここが集団の読み聞かせの面白さ。
読むのをやめて、子どもたちに聞いてみる。



「一回、行って、また帰ってきてぇ…」(ピストンのことね)

「靴のひものところにはさんで…」この意見には、
「赤ちゃん、しんどくなるわ。」
「はさまって、あぶないわ。」
と反対意見が(でも彼らは、かといっていい案が浮かばない)。



さて、どうやって運んだのでしょうか。
(それは、この本読んでね)



ひとつ読んだら、「もっと読んで!」
次の週にひとつ読んで、また次にもうひとつ…という、とても楽しい何週にもわたる読み聞かせになった。



シリーズで2冊出ているが(「パパはじどうしゃだった」)、もっと出してほしいな。
読み聞かせのあとに、一人読み出来る本だ。「りんごちゃん」と同じく、ブームになりそうな気配だ。



「なあなあ、せんせい。Rなあ、パパタオルのとこ、ゲボ吐いて寝てて聞けへんかってん。」

「パパはじどうしゃだった」の最後「パパシーツ」の読み聞かせの日、休んで聞けなかったRちゃんの言葉。今週、図書室に入ってくるなりそう言ってくれた。