幼年童話さんへのラブレター

このところ、幼年童話を積極的に読むようにしている。
絵本から物語に移行するのには、面白い幼年童話がたくさんなくてはいけない。
でも、実情はあんまりない。
もっともっと、あふれるようにあってほしいのだが。

そんななかから、久々に見つけたのは「ブンタとタロキチ」(文研出版)。
作者は丘修三さん。
丘さんは高学年の読み物を書く人だと思っていたけど、こんな話も書くんだな。
「黒い小屋のひみつ」「神々の住む深い森の中で」など、社会的なメッセージも織り交ぜながらもストーリーとしてぐいぐい読ませる面白さがある書き手なのだが、今日は幼年童話の話ね。


タヌキのタロキチときつねのブンタは、仲良しだけどケンカも多い。
お話は3つ入っているが、私は真ん中の「うそつきムシ」が一番面白かった。
いつものようにケンカになり、お前のほうが小さいと罵倒し合っていた2人。
「チビ!」
と言うと、「アリ!」と言い返される。
そしたらタロキチはアリより小さいものが思い浮かばなくて…。
ブンタに「アリより小さいもの言ってみろよ!」と言われて…。
悔しくて悔しくて家に帰って、お父さんに聞いたら「アリのうんこ」だって。お母さんがあきれて「それは、虫じゃないでしょ。」
でも、お母さんに「ノミよ。」と教えてもらう。
言い返せる言葉が出来て、タロキチはうれしい。
次の日、「ノミ!」と言ったら、ブンタは「チンコロリン!」と言い返してきた。
チンコロリン?
そんなムシいたっけ?


そこから、いるのかいないのか「うそつきムシ」合戦がはじまるのだが、子どもの心理を無理なく描いていて、すごく共感出来た。

3・4年生にも読み聞かせしてみたら、案の定大喜びで本の世界にすっと入ってきた。

「幼年」じゃなくても、本当は5年生だって読書の入り口にまだ立てない子どもにとっては、この手の本がいいのだ。
なかなか物語の本を手に取らない子のためにも、絵本だけでなくこういった本を読み聞かせに入れるようにしている。

「おしまい」といって本を閉じたら、「まだつづきあるやろ?」と子どもらの声。
「うん。でも、読み聞かせはおしまい。」
「だったら、つづく、やろ?」

ふ〜ん。面白かったんだ。
よしよし。

もっと、こんな本ないかな〜。