子どもたちとの会話より

3年生のH君。
以前市立図書館で「注文の多い料理店」の絵本(島田睦子/絵 偕成社)を見たらしく、図書室で同じものを見つけ「これ、こわいんやで。」としきりに言っていた。
あまり読書量の多い子ではないので目に止まり、カウンターの中からじっと目で追っていた。
すると本を持ち、「お〜い、この本読まへんかぁ〜!」と皆の回りをめぐり出した。友だちと一緒に絵本をめくりたかったのだろう。
でも、表紙も一般的になじみやすいものではないので、みんな関心を示さない。次第にH君の士気が下がっていくのがわかったので、私が声をかけた。
「先生と一緒に見よう。H君、その本知ってるの。」
「うん、こわいんや。さいごはくしゃくしゃの顔になるの。」

ページを追って、あらすじを一緒になぞっていく。よく覚えているH君。
紙屑のようになってしまった2人の顔が、よほど心に残ったのだろう。あまり口数が多い方ではなく、どちらかいうと表現下手で、手の方が先に出てしまう彼なのだが、賢治のちょっと「ぶるっとする」世界をとらえる感性があることを垣間見れたひとときだった。
私たちが見ていたら、他に2,3人やってきて、一緒に聞き始めた。
H君、よかったね。
注文の多い料理店」のおもしろさ、友だちにもひろがったね。


6年生のU君。
この子は本が好きで、知的好奇心も旺盛。何かに興味を持つと、そこに少し載っていたからと言って、どんどん関心がひろがっていく。
ま、ちょっとお調子者のところもあるのだが、まだ声変わりのない甲高い声で「なあなあ、先生。」としゃべりかけてくる彼との会話は、楽しい。
いままでは「南総里見八犬伝」を読んでいた。
彼が読んでいるのは、浜たかや編(偕成社)。
下に、次に出てくる登場人物の絵が現れる装丁になっていて、わかりやすい。小学生にはおすすめの現代語訳だ。
本棚で、古典全集のなかから別の「八犬伝」を見つけ、「これも八犬伝や。」「そうやで。でも、これはいまのより難しいかな。」「なんで?」
彼は、滝沢馬琴がみな書いたと思っているからだ。
「うんと、馬琴は日本人なんやけど…日本語っていっても古いやろ…」
いまの時代に合わせ、現代語訳をしていることを説明する。


「ふん、そういうこと。わっ、これなに。ペンペンネンネン…?」
「それは、ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記宮沢賢治よ。」
時間のある放課後には、楽しいU君との知的会話?でした。

昔、この「ペンネンネン…」が原作のお芝居「UBUBOMI」を観てから、私は賢治のこのお話が好きなのだ。

賢治の入り口って、思わぬところにたくさんあるんだな。
子どもからヒントをもらったようで、ブックトークの導入がひらめいた。

あと笑える話。
図書委員の当番日誌より。
彼らは、利用者を「客」と、とらえる。
書きっぷりが、面白いなぁ!しばらく笑ったよ。