本からひろがって

年度末に入れた「お笑いの達人」シリーズ(全4巻/松竹芸能・監修 ポプラ社)。「落語」「コント」「漫才」「おもしろ手品」となっている。これを読むと、人を笑わせるのは実はとても頭をつかうことだってことが、よくわかる。
「コント」編ではTKOがインタビューに答え、小学生向きに真面目にネタづくりについて語っている。


もともとは、6年生が3学期に語りの授業を毎年する時の、読み広げの一冊にと購入したものだ。でも、けっこう読み物としても面白いし、何よりも例となる小噺や小ネタが載っていて「やってみようか」と思えたらいいな…と考えていたのだ。

そしたら、ある日。

オリエンテーションが終わった6年生の何人かがそのまま、中間休みになっても図書室に残っていた。そして、このお笑いの本を見ていたらしい。
男女でわいわ言いながら「やれ」とか「やらん」とかやりとりが聞こえて…カーペットのところで本をひろげている。

しばらくすると女子が「先生、コントやってくれるんやって。はよ、来いや。」と声かけてくれた。
「見る見る」
私はかけていって、すぐ座った。
他のクラスの6年生が「なんやなんや」と近寄ってきて、戸をあけた1年生の2人にも女子たちは「おいでや。お兄ちゃんたちが、おもしろいことしてくれるで。」と言っている。

当のコント組?3人はもじもじ。
「ちょっと、待って。まだ覚えてない。」

ええい、往生際が悪い。
「ちょとだけ、本棚のうしろで打ち合わせして。短いコントも載ってた
やろ?それやったら、大丈夫やって!」と無責任に押す私。

さあ、コントが始まった。
「コント、取調室。」
一人が題を言う。

「さあ、吐け!」
「…」(黙っている被疑者)
「吐くんだ!」
「うえ〜」(ものを吐く)

「わあ〜!」
笑いがひろがった。1年生も笑っている。
いいな、いいな。男子たち、なかなかの役者ぶりだ。
こんな空間が図書室でさりげなく生まれるなんて。

俄然やる気になってきた、演者3人。本をひろげて次のお題を探し出し始めた。
ここで、ベルの音が。
「残念。また次もやってね。」
小さな小さな演芸会は、お開きとなった。

真面目なある子が心配そうに聞く。
「先生、図書室でこんなことしていいの?」
「いいよ。全然いいよ。本見て、やってみたいなと思ったんだもの。」

ライブは一回きり。
一緒に居合わせた私たちは、幸せものでした。