今年えらんだクリスマスの絵本は

ずっと忙しかったから、ゆっくり買い物にも行けなかった。
日曜日、久しぶりに河原町に。

遅ればせに冬が来たので、お店はコートやニット、マフラーが花盛り。毛糸好きの私としては、冬のショーウィンドウが一番魅力的。
ジュンク堂のあるBALビルの1Fには、かわいい茶の千鳥格子のコートが、かわいいなァ…でも、5万。でも、すてき。
なんて思いながら、気ままに見るのがリフレッシュだ。
ついでにいうと、メリーゴーランド京都店のあるビルの1Fにも、すてきなお店が。皆川明さんの「mina」(ミナ)だよ。


さて、この日はクリスマスの絵本を探そうと思っていた。
私は、たくさんの本に囲まれて日常を過ごしているので、普通の人よりは知ってるかもしれない。
でも知れば知るほど、選書の難しさや大事さをかみしめる。

黙読に適した本。
声に出すと魅力が倍増する本。
ひとりでこっそり読むにふさわしい本。
少人数でこそ楽しめる本。

そして大事なのは、そう思っていた本が、ある日ある時ころっと変わってしまったりすること。
この集団ならいけるかな…とか。
いまなら、いまの雰囲気なら、この本いけるかも…とか。
その空気を自分でとらえて、実践してみることが必要なんだと思っている。
失敗することもあるけれど、それもいいや。
予想された成功ばかりでは、予定調和の小じんまりさしか味わえない。
そう思ったりするこの頃。

書店のクリスマス色満々のレイアウトに少々辟易しながら、見つけたのは「となかいはなぜサンタのそりをひく?」(モー・プライス/作 アツコ・モロズミ/絵 松野正子/訳 岩波書店)。

まず、絵が気に入った。
大判の紙面(32×25)に丁寧に描き込まれた繊細な絵。色調もいい。

さっそく、月曜日に4年生に読んでみた。
題名を言ったあと、「なんでなんやろう?」と聞くと子どもたちは、
「そんなんそうなってるやん。」
「あたりまえやん。」
と何をいまさらという表情。私も共感して続ける。
「そうやんな。サンタにそりに、となかい。お決まりって感じやんなあ。でも、これを読んだらなぜかわかるみたいだよ。」

昔々、サンタはプレゼントの袋をかついで走って届けていたんだとか。
雪の森をえっさほいさと走るサンタの絵に、まずひきつけられて子どもらはシーン。
サンタの協力者であるエルフィンは、妖精のエルフたちのそりからヒントを得て、プレゼントも大量にのせることが出来るそりを作りだす。しかも魔法がかかっていて、ひく者さえいればそりは空を飛ぶというわけだ。

そして森に広告が出される。
「ぼしゅう しごと サンタクロースのそりひき」

もぐら、亀、さる、りす、らくだ、くま、ぞう…様々な動物たちが広告の前に佇んでいる絵。

とたんに子どもたち、「チーターがいいかも。」「ライオンだったらいけるよな。」
心のなかで(ふふん、いいぞいいぞ)をほくそ笑む私。4年生でも、しっかり世界に入ってきていることがうれしい。

そして、そこからがこの絵本のおもしろいところ。

まずぞうが仕事に応募してくる。
軽々と空を飛び(魔法がかかってるしね)調子よく家のてっぺんに到着したサンタクロースたち。ところが…ぞうが重すぎて屋根をぶち抜いてめりこんでいく絵が…。
文章は、「マーレーは、サンタ・クロースのそりひきには、なれませんでした。」とだけある。
子どもたち、爆笑!

それからいろんな動物がやってきたが、次々に撃沈。
なかでも、カンガルーがおもしろい。

絵で語らせているので、なぜかは書いていないのも、この場合は効果を出しているんだよね。
子どもたちに「カンガルーはなんであかんかったの?」と聞くと、
クラスの半分以上の子が、身体をゆらしてサンタの真似を一斉にしたのには笑った。言葉なく、身体が先に反応したのがおもしろかった。

それで、どこでとなかいが登場してくるかなんだけど…それはこれから読む人にとっておこう。

読み終わって「これでおしまい」というと、「先生、これほんとの話なん?」。顔にはまさか、というのと、もしかして、というのと…。
私はこんな時、いつも「さあ、どうやろうな。」という。それ以上言わない。
「うそに決まってるやん。」と言いながらも、ちらっと確かめたい子どもの気持ちが、いつも(だから子どもなんだよな。だからいいんだよな。)と思う。


I 君が、ずっと考え込んでいた風で「となかいって、森にいなかったんかな。」とつぶやいている。
そう、そこって大事なところなんやで。
文章では一切書かれてないからだ。でも物語を追っていくと、わかるようになっている。
そこはわかってなくても雰囲気で流していく子(となかいが最初からいてもいなくても気にしない)もいるし、すっととらえる理解度の高い子もいる。
読み聞かせは学ばせるものじゃないから、どこで心を寄せるかは私は様々であっていいと思っている。

でも、さかのぼって考えるⅠ君に、4年生らしい思考を感じてうれしくなったのだった。
あとで、となかいはどうだったのかを、I君とゆっくり話した。最後に私の見解も言って。 Ⅰ君は「そうか…。そういうことか。」と自分の疑問に納得がいったようだった。