自分に満足出来るしあわせ


司書会で紹介された本のなかで、心うばわれたのが、これ。

デルトラクエストやローワンのシリーズなどで知られているエミリー・ロッダの「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」(あすなろ書房)。
ハツカネズミのすむネコイラン町(ここから、もうおもしろいでしょ)のチュウチュウ通りの1番地から10番地まで、並んでるお家にそれぞれ住んでいる面々の物語。それがそのまま10巻シリーズになっている。

字と絵のバランスが見事。
とても読みやすい作りになっている。
「絵がいいのよ」と紹介してくれたMさんが言った。

「あれ、たしろちさとさんや!」
思わず声をあげた私。
「おんがくかいのよる」「ひっこしだいさくせん 5ひきのすてきなねずみ」(ともにほるぷ出版)など陰影のある絵がすごく素敵な、大好きな絵本作家なのだ。



1番地「ゴインキョとチーズどろぼう」と3番地「フィーフィーのすてきな夏休み」を紹介してもらい、帰りに図書館に寄ると、この2番地だけあったので、さっそく借りた。

冒険家で勇気ある彼なのに、家はいつもちらかっててくつが片っぽしか見つからないことがあることで、「クツカタッポ」と呼ばれているネズミのおはなし。

ある冒険から戻ってきたクツカタッポは、すてきな青いビンを持ち帰った。汚れを取るために布でこすっていると…。

「ご主人さま、三つの願いを仰ってください。」と太ったねずみがあらわれた。ビンの精霊エダムだったのだ。

「え〜、願い事なんてないよ。ほしいものはないし…。」
なかなか思いつかないクツカタッポ。
さあ、どうなるのかな。


思わず願ってしまったクツカタッポのお願いが、とてもよいのだ。
その人となりが出ていて。

ロッダって、いいお話書くんだな…
訳はさくまゆみこさん。
この人も、大きな仕事をされている。たくさんの才能ある作家を次々と翻訳し、日本に紹介してくれている。


自分の人生は自分で切り開き、日々のやり残したことはあっても、自分のやろうとしていることに満足する。
こんな風に生きられたら、一番いいな。

「今のまんまがいちばん」と、クツカタッポは最後に言う。

私もそう言えたらいいな。

あたたかなしあわせ感を分けてもらえるシリーズだ。