「嵐」の委員会
ある日学校に送られてきた「ニッポンの嵐」なる本。
嵐って、あのジャニーズの嵐やん。
「 当該図書は、「嵐」のメンバーが実際に全国の各地でその地域の魅力や地域社会の直面する課題などをめぐりそれぞれ自ら体験したことを若い世代向けにわかりやすく紹介し、当該体験を通じて得た思いを綴るなどして一冊にまとめた内容となっており、発行元である株式会社M.Co.様のご負担で、観光立国教育の観点からの活用を目的とした学校への寄贈のみを目的として企画・編集・製作・配布される非売品の書籍です。」
中を見ると嵐のメンバーが、全国を訪ねまわる体験記になっていて大人が見てもなかなか楽しいつくりになっている。
ジブリの宮崎さんとの対談など、読ませるところも多い。
ただ、小学生にはふりがなもうってないし、実際小さい子は読みにくいなあ…などと思いながら、私は処理をする時間がなく司書の棚に置いたままにしていた。
すると、低学年の女の子が「お母さんが、ニッポンの嵐借りてきてって言うははる。」。
いつもは図書室に来ない6年の女子グループも、「せんせ〜、嵐の本、うちの学校にも来た?」。
みんな女子なのだが、情報の早いこと。
「予約したい!」
「一番先に読みたい!」
と、書架に出す前からヒートアップする予感が…。
どうしようかな。
待っている子どもたちには申し訳ないが、図書委員会で詳細を決めるから待ってて、と返事してきた。
そして、今日。
図書委員会で5年のみんなに聞いてみた。
貸し出しをするか、図書室で閲覧のみにするか。
学校図書館の現状は、貸し出し期限は守られているとは言いがたい。嵐の本でなくても、人気の本は予約がたくさん入るが、1学期からずっと待ってるがまだ手に入らない状態の人気本はたくさんある。
その管理を図書委員がするのは、実際大変なことだ。
でも、私は子どもたちに決めてもらおうと思った。
意見はどちらも出た。
お母さんまで借りたがっているのだから、やっぱり貸し出しをしたらどうか。
人気になりすぎて取り合いになったら、本が傷むのでは。だから貸し出しはしない。
最後の意見にみんなが動いた。
それは、図書室でしか読めない本なら、みんなが図書室に来てくれるから貸し出しをしない方法をとろう。
なるほどね。
図書室にみんなが来てくれるのは、図書委員会の目標だもんね。
そして、本の置き場所も決めた。
この本棚のここにしよう。
私は禁帯出の赤いラベルを背表紙に貼った。
いろんな学校でいろんなやり方があったらいい。
お母さんには申し訳ないが、私は子どもたちが決めたことが大事なんだと思う。
それでも、図書委員のなかでも提案して初めて「嵐の本がある」ことを知った子もいて、突然(特に女子の目が)キラーン!!
図書担当の先生が中をひらいて読み始めたら、「せんせ!読まんといて!」「私らもまだ読んでないのに!」。
すっかり非難ごうごうのY先生だった。(かわいそう)
女の子たちの、その切羽つまった様子といったら、おかしかったなあ。
みんなが本当に関心のある議題は、白熱して論議出来るものだとあらためて実感したのだった。
委員会が終わったあと、メンバーで誰がいいとか、誰はあかんとか(失礼)勝手にに言い合って、子どもたちと思わぬ話が出来たのも楽しいことだった。
「嵐」騒動でした。