空想の世界にあそぶ

いま絵本が手元にないから、頭のなかで再現するしかないのだけれど。


「かめだらけおうこく」(やぎたみこ/作・絵 イースト・プレス)を3年・4年の4クラスに読んだ。
思った以上に、子どもたちは「かめだらけの不思議な世界」に釘づけ。
浦島太郎のような導入で、助けたかめの導きで巨大な「入り口かめ」の舌から中に入って行き、着いたところは…かめだらけおうこく。

子どもらは「うわあ〜〜〜!」「かめばっかり!」


40人近い集団が座ると、後はどうしても見えにくいので、私が状況説明も加えながら、びっしり描きめぐらされた「空想かめ」たちを共有した。

たとえば、かめの甲羅が、いろんなものに変化しているのだ。
甲羅に木が生えて森になったり、花が咲いたり。
「蜂の巣がめ」は、甲羅が蜂の巣になってんだから。

そして、そこから飛び立つちっちゃなかめは「みつばちがめ」?羽がついている。


足も長くなったり。らくだタイプになった「ふたこぶがめ」。
くもになった「わたぐもがめ」。


頭につのが生えた「くわがたがめ」に「かぶとがめ」。



もう、ぶっとんだこのイマジネーション。
しかも、それが「かめ」のデフォルメというのが、面白い。
やぎさんって、かめを飼ってるのかなあ。



当然この絵本は、みんな借りたい。
「なあ、先生これ借りられへんのん?」
「まだ他のクラスにも読んであげたいしな。もうちょっと待ってな。」
この繰り返し。

みんな、「私はわたぐもがめに乗ってみたいわ。」「あしなががめがいいわ。」と口ぐちにわいわい。


N君が、カウンターのところで自由読書の時も、ずうっとこの絵本を見ていた。普段は教師や司書のところに近寄ってこない子なので、今日はN君に付き合おうと、一緒にページをめくる。
N君は、まるで図鑑を見るように最初のかめの一覧表をひとつひとつ見ながら、「これはどこにいるんやろう。」「ちょう(蝶)がめはここやけど…が(蛾)がめは、どこやったっけ。」と、何度も確かめている。
そのねばり強い検索に、N君の人となりが見えたように思い、彼と近くなったように思えたひとときだった。


「ミッケ」や「時の迷路」も面白いけれど、こんな子どもたちを見ていると、探し物の楽しさは物語の絵本でも充分に味わえるのに、と思う。
時に、「ミッケ」を楽しむのはいい。
でも、それでしか楽しめないと思いこむのは、違うのではないだろうか。


やぎたみこさんは、「もぐてんさん」「おはぎちゃん」の作者でもある。
読み終わって3年生に、「さあ、この絵本を描いた人は、みんなが好きな他の本も描いています。」と質問した。
すると、Rちゃんがすかさず「もぐてんさん!」
「ようわかったなあ。そうやで。」
そうしたら、一番後ろの子が背中の本だなから一冊取り出し、「先生、これ〜!」。
「もぐてんさん」の絵本を高くさし上げた。


さすが。
オチがちゃんとつきました。