ピチコとミチコ

ピチコ。

この名前だけで、もうこの絵本はおもしろさの階段を半分までかけあがっている。
「ことりのピチコ」(どい かや/作 学研)。 
題名読んだだけで、もう子どもたちは笑うんだもん。

ピチコはお父さん・お母さんにえさのこと、飛ぶことなどを教えてもらい成長する。

ある日、高く飛んでみたピチコは、ふゆいちごを見つけ大喜びでついばむ。そしたら、なかに青い実があったのね。

「なんやろう。」
「ビー玉?」
「毒いちご?」
と子どもたち。


食べようとしたピチコに「食べないで!」と女の子の声。
ピチコが見上げると、箱をもった女の子が立っていたのだ。

ビーズを箱から落としてしまい、地面にちらばったのだと女の子は説明する。
「わたし、手伝ってあげる。」

ピチコはいろんな色のビーズをくちばしでくわえて箱に入れる。もちろん、ふゆいちごを食べるのも忘れないで。
女の子はピチコの真似をする。
「ビーズ集め&時々ふゆいちご食べ」だ。

この「真似をする」ってところが、すごくいいのだ。

ピチコと女の子は、当たり前ながら大きさが全然違う。
でも、ピチコは保護される立場だなんて思っていない。

私が「忙しいな、ビーズ集めてふゆいちご食べて。」と言うと、
「ビーズ、かちっとかんだりして。」
「いたたた、てなったりなあ。」
と喜び、空想をふくらませるみんな。

やがて無事箱にすべてビーズは戻る。
女の子は家にもっといろんなビーズがあるので、ピチコに見に来ないかと誘う。
ピチコはすごく行きたかったのだが、夕方になったら帰るようにと両親が言った教えを思い出す。

行けないというピチコに、再会を約束し、女の子は名を名乗る。

「わたし、ミチコ。」

「わたし、ピチコ。」

ピチコも名乗る。

ここの場面もすごくすごく、いい。
ピチコとミチコが対等なのだ。
友だちになった「女の子同士」のうれしさとときめきの鼓動が聞こえてきそうな物語。


子どもたちも「ミチコ」と「ピチコ」に、くすくす笑う。
「似てるう〜」
「ミチコって、ぼくのおばあちゃんとおんなじ名前や。」

この絵本のよさはいろいろあるけれど、私は2人の対等性がきちんと描かれているのが一番いいと思った。

親は生きる知恵は惜しみなく教えてくれるが、かけがえのない友だち
は本人にしかつくれない。
友だちになるきっかけと触れ合いが、しなやかに伝わってきた。