どうやって泳いだの?


サニー文庫で貸してもらった「みどりいろのバス」(ジョン・シャロン/作 こだまともこ/訳 ほるぷ出版)。
一目読んだ時から、バスからころころと落ちる音楽隊たちや、きんぽうげが大好きなおじいさんうまが大好きになった。
そして、なんといってもアイスクリームを持って泳いでくる赤ストライプの水着のおじいさん!
この可笑しみは、なんなのだろう。

この感じは、きっと2,3年生のあの子たちだったらわかってくれるに違いない。
連休明けは、この本にしようと決めていた。



森に捨てられた古いみどりいろのバス。
やってきた2人の子どもが、カーテンをつけ、素敵なうちにする。

すると、森の持ち主があらわれ、「わしの森にバスをおくなんて、けしからん!」

困った2人の前に、おいしいきんぽうげを探していたおじいさんうまが「手伝ってあげるよ」。

おじいさんうま、という表現にみんな笑う。
バスをうまがひいて、出発。


ここから話はどんどん進む。
町では市役所が火事で、市長さんが危うし!ちょうど通りかかったバスに、市長さんは飛び移り無事救出。

私が「バスがきてよかったなあ。」と言うと、R君が「でも、火消さないと市役所が燃えてしまう。」
「ほんまやなあ。後で、来たんやと思うよ。」とあわてて言い足す。
こういうところ、子どもたちはすごくよく気がつく。
リアリストだなあと思う。

きっと話が展開していっても、R君は火事の心配がなくならないと落ち着かなかったのだろう。


さて、みどりのバスは祝福され、町の音楽隊が屋根に乗り込み、行進曲を演奏しながら送っていくことになった。

ところが、下り坂になりバスは止まらなくなる。
屋根の上から、バイオリンひきがころり、ピッコロがころり、トランペット、コントラバスと次々に落ちていくのだ。
この絵が、ほんとにおかしい。
あせってるのに、のどかに見えて笑えるのだ。
子どもたちも、笑う。
「なんで気がつかへんねやろう。」
「ほんまやね。」

おじいさんうまは、とうにバスの後ろに乗っている。
坂道の先は、なんと海!

みんな「ああ〜!」
この早い展開に、息をのむ。「馬は?」「馬はだいじょうぶ?」

ぱしゃ〜んと海へはまってしまったバスの屋根に、2人の子ども。おじいさんうまは、すんでのところで飛び降りて無事だった。

いろんな人たちが2人を助けに来てくれる。
ちょっとしたヒーローのようだ。

しんせつなおじさんが、アイスクリームを泳いでもってきてくれた。

ここで、私はどうしてもみんなに聞きたくなった。
「なあ、みんなに聞きたいんやけど、おじさんはどうやって泳いできたと思う?片手に2本もアイス持ってるやん。片手だけ回して泳いできたかな。それとも、アイスを真ん中で常に持ち替えて、両手で泳いできたかな。それとも他に考えた人いる?」

手は動かさないで、足だけバタバタを動かしたと言ってくれた子がいた。

そして、これだと思う案にそれぞれ手をあげてみた。


実はこれは答えがない。
ただの1シーンだから。


こんな読み方が正しいのかわからない。
でも、どうしても私は聞きたくなったし、しあわせなことに子どもたちも自分はこう思う、ああ思うと口ぐちに言い合ったのだった。
手や足を動かして、お話してくれる子が何人もいた。


「そうか。実はこれは正解はありません。でも、気になるよねえ。先生は、気になって気になって、今日みんなと話し合えてよかったわ。」
担任の先生たちも、みんな手を上げるのも参加してくれ一緒に楽しんでくださった。


そして、「そしたら、つぎいくね。」と話にもどった。


潮がひき、またおじいさんうまにひかれて、やっとバスは陸に上がる。すると、なんとバスのなかには魚や海藻、貝でいっぱい!
沿岸警備員のおじさんがあらわれて、魚を分けてくれるかわりに自分の土地で暮らしてもいいと言ってくれる。

2人とうまは海のはたで暮らせるようになったのだった。

読み終わると、まだ子どもたちはアイスと泳ぎ方の話をしていた。
3年生も2年生もだった。


ちょっと今回は自分の色を出しすぎたかな、と思ったが、こんな私とつきあって1〜2年たった子どもたちだ。
へんなところも含めてわかってくれてるんだなと感じ、ありがたいことだと思った。


貸し借りの時間になった時に、S君が「ゴーグルもあるのかな。」とつぶやいた。
その言い方が、「あるといいなあ。海がこんなに近いんだもの。」という気持ちであふれれているように思い、S君の想像力の豊かさにちょっとじいんとした。

「あるよね、きっと。」と私はそっと言った。


「この本借りたい!」
「この本、いつ借りられるの?」
と、口ぐちにいう子どもたち。
でも、この本絶版なんだよ。こんなことってある?
子どもの本の出版事情って、ほんとにどうかしてる。