夜中の楽しみ

夜中にやっと自分の時間が出来ると、最近は詩をよむことが多くなった。
それも、小さく声に出して読んでみる。
昔買った古い文庫本の時もあるし、図書館から借りたきれいな装丁の本の時もある。

同じものをいくつか読んで、ほっとして寝る日もある。

最近読んで、心に残ったものから。

「ぼくたちはなく」(内田麟太郎/作 PHP研究所)

内田さんは、生みのお母さんを早くに亡くし、育てのお母さんと折り合いが悪く大変苦しんで大きくなられたと知り、内田さんの絵本「ともだちや」の世界が少しわかったような気がした。
ともだちやを1時間100円でしようと思いつくキツネの、もともとの気持ちはさみしいからだ。
この方法しか思いつかず、さみしさを内包していない動物とのからみではなんとかやりこなすのだが、オオカミの場合はそうはいかなかった。
オオカミはさみしさや優しさ、心の敏感な部分にとても感じやすい。でも、出し方がうまくいかないから、きっとわかってもらえにくい。

キツネは逆に、空気が読めず自分の思いだけで突っ走る。人の気持ちがわかりにくい。自分の本当の気持ちにも(さみしい)気がついていない。

こんな相手だから、オオカミはウェットな自分が出せたんだろうし、キツネはそこまで怒られて初めて目の前の相手が見えたんだろう。

この「ぼくたちはなく」を読むと、「ともだちや」のオオカミやキツネが内田さんの分身のような気がする。年齢を重ねられて傷ついた心の上をやわらかい布が何重にもまかれていき、長い時間をかけてユーモアを身につけられたのでは、と思うのだ。


「ひろった石」「はつこい」の詩が心に残る。


もう一冊は「めくってびっくり俳句絵本」シリーズ。
村井康司さんという方が編集されていて、画家もシリーズごとに違うが、企画と装丁が面白い。

右に俳句がきて、左は折り込みになっている。下に、作者の紹介。
そして折り込みを開くと…。
全体の絵が現れ、右下には村井さんの解釈がついているという具合。












ひとつの俳句で見開き1ページという贅沢な紙面で、こちらもゆったりと世界を楽しむことが出来る。
このシリーズ⑤「三つかぞえて 日常の俳句」(岩崎書店)のメリンダ・パイノさんの絵も、楽しい。
村井さん自身も俳句をされる方だそうだが、シリーズごとに雰囲気も変わり、興味は尽きない。私は気に入りました。

写真の俳句は、
「葉桜の頃の電車は突っ走る」
作者は、波多野爽波(1923〜1991)。句集「舗道の花」「湯呑」があるそうだ。
いまの季節にぴったり。


全部は見れていないが、あとは「ボールコロゲテ スポーツの俳句」。これもなかなか良かった。