いまだから 読む

nanacoさんのリクエストにこたえ、いまこのような本を探したい人がほかにもいるかもと思い、記事にしてみる。
「もう3学期も終わり。成長した子どもたちに、なにか心に残る絵本を読んであげたい。」
テーマは“ともだち”。

もしも、ぴったりくるなあ、と思ったら…読んでみてください。(今回の対象は低学年)












「ロボット・カミイ」(古田足日/作 堀内誠一/絵 福音館書店、※紙芝居は童心社)は手に取るととても楽しいお話なのだが、アニメ的イラストを好む昨今の子どもたちは、なかなか自分では選ばない。
この紙芝居は4部に分かれていて、続きが読みたくなるように出来ている。紙芝居を読み終えた後に本をすすめると、多くの子どもが完読する。そして、みな一様にカミイの魅力にやられてしまう。

感情のおもむくままに暴れ、喜び、すぐ泣いてはすぐ涙がひっこむカミイは、低学年の子どもたちそのままで、子どもたちの感情移入の深さは読んでいる最中にも、ひしひし感じとれる。
紙芝居→本へと、すすめられる好著。


「さかさのこもりくん」(あきやまただし/作 教育画劇
「へんしんマラソン」などで有名な作者だが、この本はサービスしすぎすにほどよいところで止まっているのがいい。
こうもりのこもりくんは、逆さにぶらさがってるので何でも反対にいってしまう。
「好き」は「きらい」。
「遊びたくない!」は「遊びたい!」

逆さ言葉の連発に子どもたちはすぐなじみ、笑い転げる。
でも、こもりくんの意地っ張りなところと、本当は素直になりたいところをちゃんと受け止めてくれる。
友だちについていろいろと思う事の出来る、教訓的にならずにバランスよく出来ているすてきな絵本。

「うごいちゃだめ!」(エリカ・シルヴァマン/作 S.D.シンドラー/絵 アスラン書房)
ひょんなことから、どちらがじっと動かないで話さないでいられるかの競争をはじめた、がちょうとあひる。
いろんな生きものが2匹にからんでは通り過ぎる。
じっと黙っている様子が面白く、絵本ならではの魅力が子どもをひきつける。
ところが、ついにきつねが現れ…。
話が進むにつれ、子どもたちは真剣に絵本をみつめ、読み手の幸福を味わえる作品。
ユーモアとともに、本当に友だちを想うことって?…と考えることが出来る。

「アレクサンダとぜんまいねずみ」(レオ・レオニ/作 好学社)
なんでも願いをかなえてくれる虹色のとかげの存在に迫力があり、翻弄されるアレクサンダの気持ちがうまく描かれている。
他者をうらやむ気持ち。
その人が窮地に陥った時に自分がどうするか。

サブタイトルが「ともだちをみつけたねずみのはなし」とある。
ドキドキして展開を見守り、アレクサンダが出した結末に心があつくなる、とてもあたたかいお話だ。


私は発達の専門家ではないので肌で感じるだけだが、同じ低学年でも1年生と2年生とでは、受け取る幅がずいぶん違う。

1年生だと、うれしくて身体がむずむず動き出す絵本でも、2年生だとそこはクールに聞いていてもっと別のものを求めている、ということはよくある。
いま、何が子どもたちにぴったりくるかを知っているのは担任の先生だろうし、それを垣間見た時にそれにふさわしい「本」を知っていて返すことの出来るのが司書なんだと思う。

まあ、口でいうほど簡単じゃないし、「ああ、外れちゃった…」もよくあるんだけど。