もうひとつの資格












ただいま1年生の図書カード、取組スタートしてから平均3〜4冊め。10冊まで、まだもうちょっとですな…。
がんばれ、がんばれ。






新刊ほやほやの「つづきの図書館」(柏葉幸子/作 山本容子/絵 偕成社)を買った。
図書館が舞台になったものは、つい手にとってしまう。
「菜の子先生は大いそがし」(富安陽子/作 福音館書店)にも、図書室の本から登場人物が逃げ出してしまい大騒動になる話があり、はじめは似てるのかなと思ったが、読後感は全然違うものだった。
主人公は、桃さん。年は40歳すぎ。
桃さんの勤めていた会社が倒産してしまい四苦八苦していた頃に、なぜか子どもの頃まで住んでいた地方の市役所から「あなたのおばさんが入院してしまった。他に身寄りがないので、面倒をみてくれないか。」と手紙が届く。
確か父にそんな姉にあたる人がいたな、と桃さんはおぼろげに思うが、もう両親はいないので確かめようがない。
とにかくおばさんを見舞いに行くうちに、桃さんはそのいなかの市の図書館の司書の職を得、入院中のおばさんの留守を守り、かつて自分が暮した家に住むことになる。

司書の資格を持っていてよかったと桃さんは思うのだが、どうやらその図書館は「別館」と名がついているらしく、本館は新しく市の中心部に出来た大きい図書館らしい。
しかも、別館の司書が館長と折り合いが悪く何人も辞めたので、空きがあったからなのだ。


「これって、児童文学なの?」とふと思ってしまうようなストーリーなのだが、桃さんの生い立ちや性格が次第に明かされていき、ファンタジーの入り口を入っていくうちに、物語のなかにひきずられていったのだった。

本のなかの登場人物が飛び出す話は、先に出した「菜の子先生」に限らず他にもけっこうある。
でも、物語の登場人物たちが「自分の本をいつも借りてくれたあの子の、つづきが知りたい!」と読み手の消息を熱望するのは初めてだ。
その追跡人に新米司書の桃さんが抜擢されるのである。
しかもレファレンスの依頼人は物語の登場人物なのだから、ファンタジーの優秀な書き手である柏葉さんらしい作品なのだ。

山本容子の絵が、物語の不思議さに余韻を与えている。
桃さんが美人すぎず普通の中年女性に描かれているのが、とてもよい。

不思議を不思議と思わずに受け入れ、一生懸命対応している桃さんそのものが不思議な存在なのだが、一方でいかにも図書館司書らしいとも思うのだ。

司書の資格が世間の常識のものだけでなく、不思議を呼び寄せ共存することが出来る能力もいるのだとしたら…。
私には、その資格はあるのかしら。
あったらいいのだけど。

誰が判断してくれるのかと、そう考えた自分を可笑しく思いながら、そんな不思議図書館の求人はないものかと結構真剣に願ったのだった。

桃さんは新生活の様子を、たったひとりの大切な人に知ってほしくて、手紙を何度も書いては出せずにいる。
その大切な人の存在が、作品に奥行きを与えている。

この物語を子どもたちがどう読むのか、読み終えたばかりの私には想像がつかない。
大人が読むと、しんみりする場面も多い。
学校に持っていって、ファンタジーの好きな子たちに紹介にしようと思うが、反応が測れない本は久しぶりで、ちょっと楽しみでちょっと緊張するな。