いい仕事してるなあ

「昔々、あるところに、たいへん凶暴なお姫さまがおりました…」。
すぐプッツンするので「ラ・プッツン・エル」と呼ばれ、恐れた城の者たちは彼女を塔に閉じ込めてしまう。

ラプンツェルをなぞらえて引きこもりの女の子にするところが、もうこの物語のイメージの勝利になっている。そう、ネーミングの勝利。
プッツンと結びつけるのが、上手いなあ。

作者は、「キャンディキャンディ」の原作者で知られている名木田恵子。ずっと変わらない少女漫画的な感覚と、人間模様がしっかり描けていることろがこの人の魅力だと思う。

家庭内暴力で家族を別住居に追いやり、マンションに引きこもった中学生の少女が、ある時から双眼鏡でのぞいたコンビニで同世代の少年を見つけ「ジャック」と名付け定点観測を続ける。そして、ジャックもまた何かを抱えている少年であることを確信する。

特に、後半話が大きく展開するところが読ませる。

何かが解決するのは、何か事件やむしろ一見マイナスと思えるようなことが起こらないと(つまり動きが起きないと何も始まらないということなのだろう)、いけないのだとつくづく思った。

小学校高学年から中学生がドンピシャだけど、大人が読んでも瑞々しい感情の動きに気持ちが揺れる物語だ。

この作者の「ドロロンがいこちゃん」(PHP)も、面白かった。お墓に住む女の子のガイコツ幽霊のお話で、お母さんを亡くしお墓に来たムネオに一目ぼれというストーリーだったな。
前に4年生に読み聞かせしたら、予想以上に楽しんでくれたのを覚えている。

この「ラ・プッツン・エル」、装丁・装画も雰囲気が出ていて、物語に合い素敵でした。