Don't Think Twice It's All right

「すみれファンファーレ」は、両親が離婚してお母さんと一緒に暮らしている小学生の菫ちゃんが主人公だ。
菫ちゃんは、お母さんもお父さんも好き。
3人でもう一緒に暮らすことは出来ないけれど、絆は大事にしたい。いつまでも。そう菫ちゃんは思っている。
だから、お母さんにも伝わって、お母さんも前を向いて生きようとする。

不器用な人たちがいっぱい出てくる、とても愛しい物語だ。

家庭教師の片桐くんや、友だちのみんみとそのお父さん、菫ちゃんのお父さんやいまの奥さん、長く入院しているリナちゃん、同じマンションだった宇治原さん。

みんな、いいなあと思う。

これって、作者の松島直子の目線があたたかいからだ。
人間を見つめるその、切り取り方が確かだから、みんなが一生懸命生きてることが伝わってくる。

でも、見ようとしないときっと見えてこないのだ。

スーパーでひとつ残った特売品に手を同時に出したことから、知り合ったすみれちゃんと宇治原さん。
その後、菫ちゃんは急に具合の悪くなったおばあちゃんシスター先生に出会い、肩につかまらせて延々と坂を上ることになる。
小学生の細い肩に、大人の体がのしかかる。

重い。ものすごく重いだろうなあ。
こんな時に限って、誰も通りを歩いてない。

菫ちゃんは、ふんばってただ歩く。

そこに、さっき会った宇治原さんが幸運にも現れる。
すばやく助けた宇治原さんは、「子どもひとりで、よくがんばったね!」と言う。

「周りに誰かいたら、助けてもらってました」
「そうそう!助けてもらわなきゃダメだよ!」
「でもなんか誰もいなくて…やるしかなかった…
 おいてけないから…できるとこまでやろうとしたの…」

宇治原さんは、「すみれちゃんて…ロックな人だね…」と言う。

とても無理だということに、たった一人でも挑戦すること。


うんうん、ロックな人なんだな。
わかるな。

いまは全然ロックを聞かなくなった私だけれど、若い頃に深いところで触れたことが、その言葉に反応する。

まあ、フォークな人じゃだめかっていうと、それは自分にとっての象徴的な言葉が「ロック」なだけで、現実の音楽の区分けの話じゃないんだけど。

あらためて、ロックな人として生きたいと、思ったわけです。
ふふふ。


宇治原さんも、がんばれ。
菫ちゃんの言うように「ロックな人の種」、ちゃんと育ってるよ。

そして、一人ででも挑戦するきっかけは、やっぱり自分のなかでの強い衝動で、それは「喜び」だったり「怒り」だったりするのだろう。

考えて動くことは大事だけれど、内からせりあがってくる感情をもっと大切にしないと…と最近思うことがあったので、なんだか「ロックな人」はぴったり心に落ち着く言葉だった。

そうすると、引越しで奥底にあったボブ・ディランのCDなんて出てきたりするんだよねえ。
それで、友部正人も「Don't Think Twice It's All right」を唄ったりしてたんだよねえ。
いろんなものがつながって、私は英語が苦手だから訳は不得意だけれど、くよくよするなっていうより、心のままに動いても大丈夫っていう感じかな。


あまりつきつめず、ぽーんと動く。
あとから理屈がついてくることも、あるかな…と。

いまは、そんな風になりたい心持ち。