「森」の世界にひたって

オペラシアターこんにゃく座の「森は生きている」の京都公演を観た。
客席は子どもたちでいっぱい。
子どものためのお芝居なのに、大人ばっかりという客席よりはうんといい。
オペラなので、おなじみの「森」ソングの前後にも音楽がずっと続く。知ってる歌になると、思わずくちづさんでしまう子どもたちがあちこちに。
「まつゆき草が さいた」
小さな声が、いっぱい。

いいなあ、こんな舞台は。

みなしごが、まま母たちに無理やり行かされた大晦日の晩の真っ暗な森。冬のさなかにまつゆき草をつんで来いと、言いつけられる。

その時にみなしごが歌ううたが、いつもジーンとする。

「死ぬときがきたのかしら
あたしは生きてきて
楽しいことは少なかったけど
それでも死ぬのはこわい

もう少しだけ 生きてみて
しあわせにならなくても
生きるっていうのは
こういうことだって
知りたいわ」


「生きるっていうのはこういうことだって知りたい」
ここは、こんにゃく座のつくったセリフだと思う。
湯浅芳子さんの原作は、「生きていい目をみることなんぞ、すくなかったけれど、やっぱり死ぬのはこわい…」までしか書いていない。

でも、心のなかで思ってたに違いない。
「生きたい」と。

もう一歩踏み込んで、「生きるっていうのは…」まで言わせたのが舞台ならではで、この心からのつぶやきは、人間が普遍的に思う命題のような気がしてならない。
よい脚色と思う。


うちの学校の子どもたちも、ちらほら来ていた。
私よりも、はるかに美しい歌声で「ころがれころがれ…」の指輪の歌を聴いた子どもたちは、「あっ、紙芝居で出てきた歌だ!」って気がついてくれたかな。


年末にぴったりな舞台だった。