小さなうれしいこと

読み聞かせの途中で、誰かがつぶやいて話が広がっていくと、いつも「次いって!」と怒っていたSくん。
声がとがってて、Sくんにはせっかくの友だちのいい感想が共有にならないのがいつも残念だった。

ところが、ところが、だ。

最近、Sくんちょっと変わってきたのだ。

自分もつぶやくようになったのだ。

今日読んだのは、「まゆとおに」(富安陽子/作 降矢なな/絵 福音館書店)と「ちゃんとたべなさい」(ケス・グレイ/作 ニック・シャラット/絵 小峰書店)。
「まゆとおに」のおには、まゆをうまいことして食べようとねらっているが、熱湯の鍋に自分が入る始末に。最後は、山菜おにぎりをやまんばに御馳走になり、その後も遊びに来たが決してまゆを食べようなどとは思いませんでした、とある。


1年生の子どもたちは、まゆの怪力の面白さやおにの間の抜けた可笑しさに、大笑い。富安さんらしいあたたかい物語に、降矢さんの楽しい絵がぴったりで一冊を堪能した。

最後に私が「なんでおには、まゆを食べようと思わなかったのかな?」と聞くと、みんなは、
「もうお尻やけどしたくないから。」
「まゆの力もちにやっつけられるから。」
などと言っていた。


するとSくんが、みんなの声にかぶせるように「おにぎりおいしかったからかな。」と言ったのだ。ぼくもぼくも、といった感じだった。
そうだ、料理上手のやまんばのおにぎり、私たちが見ててもおいしそうだったもんね! 

とがった声じゃない、Sくんのつぶやき。
いいぞ、いいぞ、と思う。


また、2年生の時間で。
先日紹介した「りょうりをしてはいけないなべ」を読んだと勘違いして、第1作目の「まないたにりょうりあげないこと」を手に取り「先週読んだなべのお話のシリーズ1作目だよ。みんなが1年の時に読んだよ。」と言うと…。
ガヤガヤ…とみんな。

「先生、まないたの本は知ってるけど、なべの本は読んでもらってないよ。」
「うん、知らん。」「知らん。」
「えっ!?そうやったか?」
そうだ、このクラスだけ違う本にしたんだっけ。

「ごめん、ごめん。じゃあ、持ってくるし待っててね。おもしろい本やしな。」
と私は言いながら、カーペットのコーナーを離れ司書の本だなに取りに行こうとした。
するとTくんが、
「○○先生(私のこと)がおもしろいんやったら、おもしろい本やわ。」
と、ぼそっと言った。
うれしかったな。
私には、一番の賛辞に聞こえた。

結局2年1組は、シリーズ2作をまとめて読むことに。笑いが連発の楽しい時間になった。

小さなうれしいこと。
かみしめながら、明日もがんばろう。