あたらしい出会い

タイトルを読んで…
「これって、どういうことやろ?」と聞くと、
「火曜日はシャンプーする日?」「火曜だけ?」
小さく口々に子どもたち。

読む前にひとつだけ話しておく。
世界には様々な国があり、気候や風土によって暮らしぶりも変わること。日本に住む私たちは、頭を洗うのは毎日ないし2日に一度の人がほとんどだろうけど、そんなに洗わなくてもいい国もあること。
本当は説明なしに読んだ方がいいのかもしれないが、日常の自分たちとあまりにもかけはなれていると、そこで世界に入れなくなりお話以前の問題になってしまうからだ。
いろんな考え方があり、そこに住む人たちはそれが普通だってこと(私たちには非日常であっても)を、わかる子どもたちでいてほしいんだな。

でも、読み始めると心配することなく子どもたちは絵本の世界にたちまち入ってしまった。

イタマルは3歳。
なんでも自分でするのだが、シャンプーだけは大大大嫌い。
お母さんに洗ってもらうのだけれど、火曜日はイタマルの泣き叫ぶ声が家じゅうにこだまし、姉のダニエラは弟の入浴中は耳に指をつっこんでいなくてはならないし、お父さんは出かける始末。

弟思いのダニエラは床屋でまるぼうずにしたら、シャンプーしなくて済むと考える。


イタマルやダニエルの発想や行動の根拠が納得いくように描かれているので、お話に無理がない。
「おじいさんみたいな はげあたまになるの?」
とイタマルが尋ねると、ダニエラは、
「ううん。イタマルのかみのけは、またはえてくるもの。」
と大真面目に答える。
私は、読んでいて吹き出しそうなほどおかしい。

でも、子どもたちは大真面目に聞いている。笑いはおきない。
「あかんたれ」のイタマルにやいやい言いながら、感情移入してちゃんと添っているのだ。

ラストもひねりがあって、楽しい。

お母さんからのプレゼントも、布にかぶせられて小さなヒントがいくつかあるだけ。子どもたちと当てっこして、楽しんだ。

ただ低学年には「3さいはん」の「半(はん)」が、ちと難しいんだなあ。訳文としては、しゃれているのだけど。
「半ってね、6ヶ月ってこと。4月、5月、6月…」
指折って、一緒に数える。
すると…
「え〜、そんなに!」
「長い〜〜!」
よかった。やっと実感もてたのね。


何が長かったかは、この絵本を読んでみてください。


「かようびはシャンプー」(ウーリー・オルレブ/作 ジャッキー・グライヒ/絵 母袋夏生/訳 講談社)。
考えてみれば、私もシャンプーが大大大嫌いな子どもだった。
みんなは、シャンプーなんて全然平気!と豪語していたが、実は嫌いな子いると思うなあ。
そういう意味では、こっそり共感を呼ぶテーマに違いない、きっと。

琴子さんのブログ「すきまな時間」のなかに紹介されていた、オルレブの「くじらの歌」にひかれ読んでみたらすごく良かったので、絵本や他の物語を何冊か借りてみたのだ。
今回は借りなかったが、絵本「Tシャツのライオン」もイタマル&ダニエラコンビのストーリーらしい。

オルレブの作品は人に対しての暖かいまなざしがあり、ユーモアがある。また、心のなかにあるいろんな自分への受け止め方に、とても幅がある。
弱い自分、悪い自分を出せてほっとするような安心感が。

プロフィールを見ると、ポーランド生まれのユダヤ人で強制収容所終戦を迎えた方らしい。現在はエルサレムに在住だとか。

あたらしい出会いがあり、いまから他の作品を読み進めるしあわせを感じ、うれしい私。
琴子さん、ありがとうね。