うれしいんだけど


図書委員会は5年生ですることになっていて、一年間活動する中で親しくなるし教室も一番近いので、日常的に図書室に来る機会も多い。けれど6年生になると教室も少し離れ、最高学年として学校で役割を持つことも多く、休み時間もあまり来なくなる。


5年生の女の子たちが受け入れ作業途中の「ポークストリート小学校」シリーズ(パトリシア・ライリー・ギフ/作 さ・え・ら書房)を司書の棚から見つけ、「先生、これ、いま借りたい!」。
「どの題名がおもしろい?」
「『キャンディーかずあてコンテスト』か『まほうの恐竜ものさし』かどっちがおもしろそう?」
私の好きな作品なので、ついストーリーの説明にも力が入る。
「この本はね、いつも座席票が出てきてね、この席の子たちが順々に主人公になるの…」
そしてブックカバーフィルムをせかされながらかけていると…。


6年のK君がやってきた。
彼はいわゆる大の本好き。今年は読書クラブを選んでくれた。
獣の奏者」をお小遣いで買ったつわもの。
この間来た時にすすめた「クロニクル 千古の闇①オオカミ族の少年」(ミシェル・ペイヴァー/作 評論社)を読んで面白かったので、2巻を借りに来たのだ。
ところがまだ2巻以降は、ブックカバーもかけていなかった。
「昼休みに出来あがるようにしておくし、待っといて。」
「う〜ん、昼は来れへんしここで待っとく。」

横にひかえたK君。はいはい、これもカバーかけろと言うのね。

そこに、重ねるように来たYちゃんとHちゃん。
「先生、なんかいい本ない?」
ひみつシリーズ新しいのきた?」

Yちゃんは、出版社が寄贈してくれる「ひみつシリーズ」が大好き。でもいち早く読んでいくので、Yちゃんがまだ読んでないのはいまのところないなぁ。

「あ、そうだ。クロニクル千古の闇、これはどう?K君、面白かったんやな!」
「え〜、どんな話?」
「ほらK君、言ってやって。」
カバーをかける手を休めずに、私。
「う〜、それは一言で言うのは難しい。(そりゃそうなんだ。わかってて、K君にふっている…。この繊細ですてきなお話!それだけにあらすじを語るのは難しい。)」
「4000千年前の森の話やんな!」と、私。
酒井駒子のムードある表紙を見ていたYちゃん。「借りようかな。」


またまたそこに、別の6年の女の子が友だちを連れて来た。
先日私の本だなから、倉橋耀子の「風の天使」を貸した子だ。
その時は、借りながらもあまり気乗りしなかったようなのに、「先生、この本むっちゃ面白かったわ。この子も読んでん。」と、隣の子を指す。

そうやろ。倉橋耀子は、高学年女子におすすめなんだ。今度は「青い天使」を読んでほしいな。
そして、2人は「先生の本だなみていい?」
(前に紹介した、自称?“うやうやしい場所”)
「いいよ。」


うれしいけれど、ものすごく忙しい中間休み。
自分が5人くらい、いてほしい!
そう思ったひととき。

「準備してないから、今度ね。」
こういうのは簡単だけれど、そう言ったら子どもたちの“いま読みたい”の小さな火は簡単に消えてしまう。
毎日居れたらなぁ…と、痛感する場面だ。

それは、本がいくらたくさんあっても、いくらカウンターの電子化が進んでも、図書ボランティアさんの読み聞かせが盛んになっても、質の違う問題だ。
学校図書館には、その子その子の本の嗜好の変遷を知っている「人」が必要なのだ。