2冊読んでわかったこと












以前に絵本「クラウディアのいのり」(村尾靖子/作 小林 豊/絵 ポプラ社)を読んだ時にこれが事実であることに衝撃を受け、クラウディアの気持ちを考えると気が遠くなりそうだった。でも、心の奥に日本での奥さんはどう思っているのだろうというのが残ってずっとどこかひっかかっていた。

すると、今日たまたま図書館で単行本の「クラウディアの祈り」を見つけたのだった。読みはじめたら止まらなくなり、あっという間に読み終えた。そして、やっとこういうことだったのか、とわかったのだ。

戦時中に朝鮮に渡った蜂谷彌三郎・久子夫妻は、終戦をそこで迎える。ソ連軍が入ってきて、彌三郎はスパイ疑惑にかけられ強制連行されてしまう。平壌の留置所からシベリアへ抑留。彌三郎と久子が再開するのは、50年後のことになる。彌三郎は凄惨なシベリア刑務所の生活の中で、クラウディアというロシア女性と出会い後に結婚し、37年間ともに過ごすことになる。
運命がまた動き出したのは、ソ連が崩壊した1991年以降である。日本の情報が少しずつ入るようになり、別れたきりの妻子が日本で生きていることがわかったのだ。そして、妻の久子はずっと独身を通してきたのだという。
クラウディアは彌三郎を日本に帰すことを心に決め、手続きに奔走する…。

1998年にテレビでドキュメント「クラウディアからのの手紙」が放映されたのがきっかけとなり、作家の村尾さんが蜂谷彌三郎・久子夫妻に取材し、これらの著作が生まれたのだが、私は読みながらクラウディアさんや久子さんの人間の器の大きさに驚かされた。
「他人の悲しみの上に自分の幸福を築くことは決して許されるべきではない」とするクラウディアさんのや、「もしもロシアで彌三郎に子どもがいたら日本の永住帰国はしてはいけない。子どもから父親を離してはいけない。」と語る久子さんがすごいなあと。
男女関係云々を乗り越えて、相手のことをまず思う気もち。なかなか思えるものではない。
こういう女性2人に囲まれた彌三郎さんもまた、人間として大きな方なんだろう。

絵本はクラウディアに添った内容だったので、見えないところがあったが、こうして2冊を読むとしみじみと伝わるものがあった。
舞台にもなっているみたいだが、それは観たくないな。
私はやっぱり本だけでいい。事実が重すぎるから。

こうした人の人生を大きく変えてしまう戦争は、やはり絶対起こしてはならないとほんとに思う。