悩め、生きよハムレット

大阪ハムレット」。
前情報なしに観たので、こんな映画だとは予想外だった。
松坂恵子演じる主人公が家族を振り回して奔放に生きるストーリーだと思ってたな。全然違った。
確かに奔放には生きてるんだけど、母の存在がちゃんと子どもたちにとってかけがえのないものになっている。
それぞれの子どもたちの生きっぷりが、すごく良かった。

長男が、年上の彼女に子守唄をうたうシーン。
次男が大阪弁ハムレットのセリフをしゃべりながら、走っているシーン。
三男が病院であきちゃん(がんにおかされた叔母)と話すシーン。

どれも情感が伝わってきて、映画ならではの躍動感が生きている。

女の子になりたい三男が、クラスのみんなに馬鹿にされたとあきちゃんに言いに来る。
するとあきちゃんは、「自分のしたいことをするのは大変やけど、ここ(指で三男の胸を指して)覚悟きめてがんばり。」と言う。
自分も人とおんなじことをするのが嫌だったから、世間の風当たりは強かったな…と笑うあきちゃん。

三男を一人前の人間として扱って話している態度が、すばらしい。
本上まなみが演じているのだが、短い出演だったのに印象に残る存在感だった。

児童文学でも映像でも、育ちきってない大人や子どもが言葉足らずだったり分かりあえなかったりする話はものすごく多いが、この映画は「育ってる」人たちの話で、そこが新鮮だったのかもしれない。

観終わった後の、この満足感。
満ち足りておやすみなさい。