絵本の世界に遊ぶ












「もぐてんさん」(やぎたみこ/作・絵 岩崎書店)は去年本屋で見つけ買った本だが、低学年に読むととても喜んだ。
がんちゃんちの庭にあらわれたもぐてんさんは、自分の身体を大小自由に変えられるだけでなく、がんちゃん一家も小さくしてくれる。「みぎてくるくる、ひだりてくるくる」聞いてる1年生は身体がもぞもぞ。
「みんなもやりたい?」と言うと、
「やりたい!」
小さくなる体操をみんなでやる姿をみていると、まだまだ絵本の世界と同化する年齢なのだと思う。小さくなったがんちゃんが、大きなもぐてんさんの背中をすべり台にして庭の池に飛び込むところは、「いいなあ!」「やりたいなあ」。
やぎさんの絵が細部にわたり描かれているので、子どもたちの目はいつまでも絵を見ている。次めくろうとすると、「ちょっと待って!あそこがね。」「先生、ここ見て。」と止めるのだ。

そんなやぎさんの新作が「おはぎちゃん」(偕成社)。
題名だけで、もう心釘づけって感じなのだが、こちらは下読みしてみると「もぐてんさん」の完成度に比べるとう〜ん。実験作のような感じ。コアな作品というか…
どうしようかなと思いつつ、今日2年生に読んでみた。
するとみんな、ものすごく反応するではないか。
おじいさんが縁側で落としてしまったおはぎが、ころころと転がっていく。それがおはぎちゃん。設定はなんとあかちゃんなのだ。
黒くてまんまるなおはぎちゃんに、「ふとっちょ。」「おっきいあかちゃん。」とみんな。
カナヘビ、ミツバチ、クモ、チョウたちがおはぎちゃんをみんなで育てようとはりきる。クモの巣のハンモックに寝かされたおはぎちゃんに、「いないいないばあ!」。おはぎちゃんは「きゃっきゃっ」。
で、話はどんどんシュールになっていく…。
でも2年生は、どんどんついてゆくのだ。誰もありえないとは言わず、この不思議な物語の世界にひたっていた。
この子たちとはつきあって2年目になるが、どっしり受け止めてくれる彼らがとても頼もしい。

読み終わったら、本好きなMちゃんが「なあ、こんな本どこで見つけてくるの?」と大人のような口調で尋ねてくる。
その言い方がどこか悔しげで、とても可笑しかった。

恐るべし、やぎたみこ氏。最近の絵本作家のなかでは、私の一番のおすすめだ。