ベロニカに思う


「みんなのベロニカ」(ロジャー・デュボアザン作・絵 童話館出版)を読んだらデュボアザンが少しわかったような気がした。
「めうしのジャスミン」はジャスミンに視点が集中してるので、脇の動物たちの個々の印象は弱いのだけど、「ベロニカ」はもっとていねいに描いている。
ベロニカに非は何にもなくて、新参者を受け入れない動物が悪いのだが、「無視してみたものの気になる転校生」って感じがとてもよく出ている。
ついに小屋から出てこなくなったベロニカを、こっそりのぞきにいくそれぞれの動物たち。自分の好きな食べ物を、みんな持参する。最後はベロニカの回復にみんな喜び、「ベロニカの目、とてもかわいいと思うわ。」と認めるほどになる。
この物語には弱者を救済するような存在は誰も出てこない。
「こんなことしていていいの?」と口火を切る者もいない。
ただ、時間の経過とともにみんなの心が変化していき、ベロニカも優しく受け入れる。
ここにおおらかさとたくましさを感じ、実は言葉に出さなくても「悪かったな」とみんなが思っていることが伝わってくるのだ。
逆に言えば、ベロニカも受け入れてもらうまでに「世間」という試練を乗り越えなければならなかったんだろうな。
子どもたちの関係もほんとはこうあったらいいな、とふと思った。
大人が善悪を諭す前に、もっと子どもたちでいろんな感情をやりとり出来ないかな。
そこにはいじわるだったり、嫉妬だったりマイナスの感情もあるけれど。
そんな感情も経験して、ゆっくり育っていってほしいんだなあ。
デュボアザンの描く世界にほんとの意味での対等性・平等性を感じ、そこがいいなと思う。
ジャスミンほどスター性はないけれど、おっとりしていて最後には自分の個性を認めさせたベロニカもまたいい。