こもりくんと5年生
5年生との図書の時間。
去年はなかなか、この学年にかかわれなかった。
今年は本を通して親しくなりたいと思っている。
なので、今日は様子を見ながら「どのへんが好みかな?」「どこが響くかな?」と、そういう姿勢でいく。
あるクラスは、オリエンテーションをしている時、伝記のジャンルの話になった。担任の先生が2類の本が並んでいる棚に行って、示して下さった。そして伝記の題名をはしから読んでいかれた。
「アンネ・フランク、宮沢賢治、リンカーン…」
「え〜!!」
リンカーンにものすごく反応する子どもら。
ひらめいた私。
「もしかして、リンカーンってテレビの題名やと思ってる?」
「そうそう。」と子どもたち。
「もとは、実際にいた人よ。リンカーンてアメリカの有名な大統領だった人よ。」
「え〜!!」
ああ、私も(ええ〜〜!!)やわ…。
でも、これで雰囲気がぐっとやわらかくなった。
またあるクラス。図書の返却を守ろうという話のあと、「返却期間を過ぎちゃった。まだ返してないなあ…。そんな経験したことある人。正直に手を挙げてみよう。」
みんな正直。ほとんど全員でした。
「うわあ、正直でよろしい。みんな、やったんか。これから、そういう場合はいったん返す。そして返却印を押してもらって、また借りる。これやで。」
「はあい。」
手をあげたみんなは、なぜかうれしそうなのだった。
そして、読んだ本は「だじゃれオリンピック」(中川ひろたか/作 高畠純/絵 絵本館)と「さかさのこもりくん」(あきやまただし/作・絵 教育画劇)。
だじゃれシリーズは他にも出ている。この本はみんなで読むと面白い。時間差で(わかった!)とくすくす笑いが起きるのが、落語のようだ。
「さかさのこもりくん」を読みながら、「じゃあ、もうあそばないから。くまくんとは、にどとあいたくない。」とこもりくんが反対の言葉を言うところで、なぜか心のなかで泣きそうになる。
子どもたちは、大爆笑なんだけど。
自分の心をそのままに言えないことって、あるよね。
言おうとすればするほど、誤解されたり。
最初にガツンと怒られたら、言わなくていいいじわるを言ってしまったり。
あやまるきっかけをなくしてしまう。
こんなほんとは純な気持ちが、ひとひねりした言い方になっているところに、素直になれないいろんな子たちの顔が重なってきて、なんだか「こもりくん、いい言い方だよ。わかるよ。もっともっと、このままいくといいよ。ずっとずっと、これでいきな。」と言いたくなった。
こもりくんの言葉、実際に声に出して見ると、ぐっとくるんだ。
黙読では味わえない感情が飛び出してくる。
低学年に読むのとはまた違う、うまく言えないが空気の揺れる感覚があった。
5年生と、なんだか仲良くなれそうな兆しがあった、春のひととき。